中国クラウドのデータ保存・国外転送・通信規制」完全ガイド|Alibaba Cloud構成時の制度対応と実務の違いとは?

こんにちは!クララ株式会社のクロスボーダービジネスチームです。
中国市場でクラウドサービスを展開するうえで、クラウドの種類やサービス内容の違い以上に重要なのが、「法制度への対応」です。

とくに押さえておきたいのが、次の3点:

  • データをどこに保存するか(保存先)
  • 国外に送るか(出境/国外転送)
  • 誰にどう届けるか(通信経路)

本記事では、Alibaba Cloud(グローバル版)を使って中国向けサービスを設計する場合に直面する法制度と技術要件を中心に解説し、Ali Cloud(中国版)との制度対応の違いも必要最小限に触れます

データ保存先の法制度と現実的な制限

中国のサイバーセキュリティ法およびデータ安全法では、一定の業種やシステムで取り扱う個人情報や重要データは中国本土に保存しなければならないと定められています。

Alibaba Cloud(グローバルアカウント)では技術的に「中国リージョン」を利用することも可能ですが、ICP登録や等保認証の取得に必要な中国法人がないと、保存先として認められない/審査が通らないという課題があります。

 

比較項目 Alibaba Cloud(グローバル) Ali Cloud(中国版)
データ保存先 主に海外リージョン/
中国リージョンは技術利用可だが実務上制限あり
中国本土リージョン(等保・ICP前提)
ローカライゼーション対応 ❌ 対応困難 ✅ 等保や業種別要件に準拠可

データ出境(国外転送)の制度と設計上のポイント

2023年に施行されたデータ出境安全評価弁法により、個人情報や重要データを中国国外へ送るには、以下のような要件を満たす必要があります:

  • 年間10万人以上の個人情報を扱う場合:国家網信弁(CAC)による安全評価が必須
  • 一定規模以下でも:標準契約書または認証の提出が必要

Ali Cloudでは、このプロセスを想定したログ管理やアクセス制御、設計支援がありますが、Alibaba Cloud(グローバルアカウント)ではこうした支援が受けにくく、出境前提の構成設計は実務上非常に困難です。

比較項目 Alibaba Cloud(グローバル) Ali Cloud(中国版)
出境対応 ❌ 制度支援なし(構成困難) △ サポートあり(審査自体は厳格)
出境前提の設計 リスク大・非推奨 法令準拠の構成可能(評価・標準契約)

通信速度と安定性:中国向けの構成で最も見落とされやすい罠

中国国内からグローバルリージョンにアクセスすると、GFW(グレートファイアウォール)や国際回線を経由するため、遅延・パケットロス・TCPリセットが発生する可能性があります。

Ali Cloudでは中国国内のCN2高速回線やCDNが自動的に利用され、通信品質が大きく向上します。一方、Alibaba Cloudグローバル版では、中国向け通信の最適化は自己責任となり、安定したUXを保証するのが難しいのが実情です。

比較項目 Alibaba Cloud(グローバル) Ali Cloud(中国版)
通信品質 △ GFW・国際回線の影響あり ◎ CN2+CDNで高速・安定
中国国内ユーザー向けの表示速度 △ 遅延・非表示リスクあり ◎ 国内通信完結で快適

制度対応と構成の現実を見極めて設計を

中国市場におけるクラウド活用では、「使えるか」ではなく「合法的・安定的に運用できるか」が鍵です。

Alibaba Cloud(グローバル)は柔軟性が高く海外向けには適していますが、中国本土ユーザーを対象とする場合は、保存・転送・通信の各要件に対して実務的な限界があります。

法制度に適合した構成を実現したい場合は、Ali Cloudまたは現地パートナーを通じた設計支援が不可欠です。

関連リンク

📎 Ali Cloudとグローバル版の全体比較はこちらの記事で解説しています:
👉  Alibaba Cloudグローバル版と中国版(Ali Cloud)の違いとは?中国向けクラウド選定ガイド【2025年最新】

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