
Alibaba Cloudグローバル版と中国版(Ali Cloud)の違いとは?中国向けクラウド選定ガイド【2025年最新】
こんにちは!クララ株式会社のクロスボーダービジネスチームです。
中国向けのWebサービスやクラウド展開を検討する中で、「Alibaba Cloud(アリババクラウド)」という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか?
実はこのAlibaba Cloud、「グローバル版」と「中国版(Ali Cloud)」の2つが存在し、それぞれ大きく異なる点があります。
この記事では、両者の違いを【技術・法規制・アカウント・ネットワーク・サポート体制】といった観点から整理し、中国進出時にどちらを選ぶべきかを解説します。
この記事の目次
運営組織とアカウント登録の違い
同じAlibaba Cloudでも運営元が別物
グローバル版と中国版は、そもそも運営会社が異なるため、アカウントの作成要件や使用環境がまったく異なります。たとえば、グローバル版は国際的なクレジットカードで登録できますが、中国版はAlipayや中国国内の銀行口座が必須です。
項目 | Alibaba Cloud(グローバル) | Ali Cloud(中国版) |
運営主体 | Alibaba Cloud International(シンガポール法人) | 阿里云计算有限公司(中国法人) |
アカウント登録 | クレジットカードで可 | 中国携帯番号+Alipay or 銀行口座必須 |
言語対応 | 英語・多言語 | 中国語(簡体字) |
提供エリア | 中国本土以外の全世界 | 中国本土限定 |
ICP登録とWeb公開の可否
ICP登録なしではWeb公開できないのが中国のルール
中国でWebサイトを公開するには、ICP登録(インターネットコンテンツプロバイダ登録)が法的に義務付けられています。
Ali Cloudではこの登録をスムーズに進めるためのサポート体制がありますが、グローバル版では基本的に提供されていません。
項目 | Alibaba Cloud(グローバル) | Ali Cloud(中国版) |
ICP登録サポート | ❌ なし | ✅ 公式サポートあり |
ICP未取得時のWeb公開 | ❌ 不可(遮断対象) | ❌ 不可(遮断対象) |
ICP取得後のWeb公開 | ✅ 可能(合法) | ✅ 可能(合法) |
Alibaba Cloud(グローバルアカウント)でも、中国リージョンのサーバと有効なICP登録情報が揃えばWeb公開は技術的に可能です。
しかし、実際の登録プロセスでは中国語による本人確認・SMS認証・事業許可証提出などが求められ、自社のみでの対応は非常にハードルが高いのが現実です。
そのため、ICP登録を伴うWeb公開を検討する場合は、Ali Cloudでの運用または、信頼できる代行会社を通じた申請がおすすめです。
▼ ICP登録の制度や手続きがよくわからないという方へ
クララでは、中国本土向けWeb公開に必要なICP登録の代行支援サービスを提供しています。
登録要件の整理から、必要書類の準備、申請代行、ホスティング環境の整備までワンストップでご支援可能です。
支払い方法と通貨の違い
決済方法もアカウントごとに完全分離
アカウント体系が違えば、当然支払い方法も異なります。
グローバル版は米ドル決済で国際クレカOKですが、中国版は人民元しか使えず、中国内の決済手段が必要です。
項目 | Alibaba Cloud(グローバル) | Ali Cloud(中国版) |
通貨 | 米ドル・現地通貨 | 人民元(RMB) |
支払方法 | クレジットカード、PayPalなど | Alipay、中国銀行口座など |
対象ユーザー | 海外法人・個人 | 中国法人・個人 |
等級保護(等保)認証への対応
中国国内ビジネスでは等保2.0対応が実質必須
Ali Cloudは中国政府が定める「等級保護制度(等保2.0)」に正式対応しています。
ECSやRDSなど主要サービスがあらかじめ等保認証済みであるため、企業の認証負荷を減らすことができます。
項目 | Alibaba Cloud(グローバル) | Ali Cloud(中国版) |
等保対応 | ❌ 非対応 | ✅ 対応済みサービスあり |
サポート体制 | ❌ なし(自力) | ✅ コンサル・レポート提供あり |
対象ユーザー | 中国以外 | 中国法人・現地法人 |
データ規制とネットワーク環境
中国本土でのクラウド活用は「保存先」「転送制限」「通信経路」がカギ
中国でクラウドサービスを活用する際は、「データの保存場所」「国外への転送」「通信経路と速度」の3点において、法制度と技術的制約を考慮する必要があります。
これは、サイバーセキュリティ法・データ安全法・個人情報保護法などに基づく規制であり、違反すればサービス停止や法的措置のリスクが伴います。
以下に、グローバル版Alibaba Cloudと中国版Ali Cloudの違いを簡潔に整理します。
項目 | Alibaba Cloud(グローバル) | Ali Cloud(中国版) |
データ保存先 | 主に海外リージョン(東京・米国・シンガポール等)
※中国リージョンは利用制限あり |
中国本土リージョン(北京・杭州・深圳など) |
データローカライゼーション対応 | ❌ 非対応 | ✅ 完全対応(等保準拠) |
データ国外転送 | 要審査・政府承認(出境制限あり)
※理論上の利用を想定 |
対応構成・審査サポートあり(審査は必要) |
通信速度(中国国内) | (海外リージョン利用時)GFW・国際回線経由のため遅延リスクあり
(中国リージョン利用時)高速・安定 |
高速・安定(CN2+CDN統合) |
※ 上記の詳細な背景や制度内容については、こちらの別記事で詳しく解説しています:
👉 中国クラウドにおけるデータ保存・出境・通信規制の最新動向とは?
グローバル版と中国版、提供機能の違い
中国特有のサービスに対応するのはAli Cloudだけ
Ali Cloudでは、WeChat PayやAlipayとの統合、ローカルなAI審査ツールなど、中国ならではのニーズに対応した機能が豊富に揃っています。
グローバル版では利用できないものも多く、中国ユーザー向けの最適化を重視するならAli Cloudが優位です。
どちらを選ぶべきか?利用目的別ガイド
利用目的 | 推奨プラットフォーム | 理由 |
中国本土向けサービス | Ali Cloud(中国版) | 等保・ローカル最適化に対応 |
海外向け or 規制回避目的 | Alibaba Cloud(グローバル) | 柔軟な登録と支払方法、規制対象外 |
中国と海外の両方をカバーしたい | 両アカウントを運用 | 地域ごとの構成分離が現実解 |
クラウド選定は「どこで、誰に向けて使うか」が鍵
Alibaba Cloudという名前は1つでも、グローバル版と中国版ではその仕組みも対応範囲もまったくの別物です。
中国本土でクラウドを活用するなら、等級保護やデータ規制といった法制度への準拠が前提となるため、Ali Cloud(中国版)を選ぶことが現実的な選択肢となります。
一方で、中国向けに軽く情報発信したいだけ、Webサイトを公開したいだけという場合には、グローバル版Alibaba Cloudでも対応可能なケースがあります。
ただし、中国におけるクラウド利用は規制が頻繁に変わる分野でもあり、構成や方針は慎重に設計する必要があります。
クララ株式会社では、中国市場向けのクラウド構成、ICP登録支援、等保対応のご相談まで、実務に即した支援をご提供しております。
「そもそも何から始めればいいのかわからない」「いまの構成で問題ないか不安」といった段階からでもお気軽にご相談ください。
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