
AWS Route 53のGeoDNSはAlibaba Cloudでも可能?中国向けWeb高速配信の方法とは
こんにちは。クララ株式会社のクロスボーダービジネスチームです。
私たちは、中国向けWebサービスの展開や、日中間のネットワーク最適化を日々ご支援しています。
最近よくいただくご質問がこちらです:
「AWSではRoute 53を使って中国ユーザーだけ別ルートに振り分けていたけど、Alibaba Cloudでも同じことできるの?」
結論から言うと、Alibaba CloudでもGeoDNSは可能です。
ただし、AWSとは使う仕組みが異なるため、それぞれの特徴を理解して使い分けることが大切です。
まずは、AWS Route 53の位置情報ルーティングが何をしていたのか、簡単に振り返ってみましょう。
この記事の目次
- 1 「AWSではRoute 53を使って中国ユーザーだけ別の経路にルーティングしていたんだけど、Alibaba Cloudでも同じようなことってできるの?」
- 2 Route 53のGeoDNS機能とは?位置情報ルーティングの基本を解説
- 3 Alibaba CloudでGeoDNSは可能?2つの主要サービスを紹介
- 4 Route 53 vs Alibaba Cloud:GeoDNS機能の違いを徹底比較
- 5 GeoDNSだけでは不十分?通信高速化に必要なネットワークとは
- 6 まとめ:Alibaba CloudのGeoDNS機能で中国向け配信も最適化できる
- 7 中国向けWeb配信・DNS構成をクララがサポートします
「AWSではRoute 53を使って中国ユーザーだけ別の経路にルーティングしていたんだけど、Alibaba Cloudでも同じようなことってできるの?」
このご質問、実はここ数か月よくいただいています。
特に、AWSからAlibaba Cloudへの移行を検討している方や、最初からAlibaba Cloudで構築を進めている企業様から多く寄せられています。
結論から言えば、Alibaba Cloudでも「位置情報に基づいてルーティングを切り替える」ことは可能です。
ただし、AWSのRoute 53と同じ手法ではなく、Alibaba Cloudならではの機能や考え方を使う必要があります。
本記事では、両者の違いや、Alibaba Cloudでどうやって地理的ルーティングを実現するのか、あわせて通信高速化のポイントもわかりやすく解説していきます。
Route 53のGeoDNS機能とは?位置情報ルーティングの基本を解説
AWSのRoute 53には、「位置情報ルーティング(GeoDNS)」という機能があります。
これは、アクセス元の国や地域に応じてDNSの応答先(IPアドレス)を切り替える仕組みです。
たとえば:
- 中国からのアクセス → 「Express China」や「Global Accelerator」など高速経路へ誘導
- 日本・他国からのアクセス → 通常のオリジンサーバーへ直接ルーティング
こうした制御をDNSレベルで実現できるのがGeoDNSの強みです。
👉 関連記事: 「AWS Route 53で中国向けWebサイトを高速化したい方はこちらもご覧ください」
▶ 中国からWebサイトを速く表示させるには?Route 53の位置情報ルーティング活用法
Alibaba CloudでGeoDNSは可能?2つの主要サービスを紹介
Alibaba Cloudでも、位置情報ベースのルーティングが可能です。
Route 53とまったく同じというわけではありませんが、ほぼ同等のことが実現できる機能が用意されています。
具体的には、以下の2つのサービスを使います。
① Intelligent DNS Resolution(Alibaba Cloud DNS)
Alibaba Cloudの標準DNSサービスには、「インテリジェントDNS解決(Intelligent DNS Resolution)」という機能があります。
この機能では:
- アクセス元の地域(中国、香港、日本など)や
- 使用している通信キャリア(ISP)
などに応じて、異なるIPアドレスを返すことができます。
たとえば、上海や広東からのアクセスには高速化用IPを返し、日本からのアクセスには直接オリジンのIPを返す、といった細かい制御が可能です。
👉 公式ガイド:Intelligent DNS Resolution
② Global Traffic Manager(GTM)
もう一つが「Global Traffic Manager(GTM)」というサービスです。
こちらはより高度なトラフィック制御が可能で、地理情報に応じて複数のIPアドレスプールから最適なものを選んで応答させることができます。
加えて、
- フェイルオーバー機能(あるサーバが落ちたら自動で切り替える
- 優先順位の制御
なども組み込めるため、より柔軟な構成を組みたい方にはGTMがおすすめです。
Route 53 vs Alibaba Cloud:GeoDNS機能の違いを徹底比較
比較項目 | AWS Route 53 | Alibaba Cloud DNS / GTM |
地域ルーティング | 〇(国・大陸単位) | ◎(中国内地域も可) |
ISPごとのルーティング | △(制限あり) | ◎(中国大手ISPに対応) |
UIの使いやすさ | ◎(日本語UI) | ◯(中国語多め) |
中国本土での親和性 | △(ICP登録が必要な場合も) | ◎(現地最適化済み) |
AWSのRoute 53はシンプルで操作性も良い一方で、中国国内での通信やISPレベルの制御には限界があります。
一方、Alibaba Cloudは中国市場に特化したきめ細かな設定ができるという強みがあります。
GeoDNSだけでは不十分?通信高速化に必要なネットワークとは
DNSレベルで分岐できるようになっても、実際の通信経路が遅ければ意味がありません。
そこでよく組み合わせられるのが、以下のようなネットワーク高速化サービスです。
- Express China Alibaba Cloud Global Accelerator(GA)
- Express China(CN2)
これらを使うと、中国のユーザーが国内のエッジノードにアクセスし、Alibaba Cloudの高速バックボーン経由で日本のサーバーへ接続するといった構成が可能になります。
つまり:
- DNSで地域ごとに適切なルートへ振り分けて
- 通信自体はGAやCN2で最短距離・低遅延に
という“合わせ技”が、よりよいユーザー体験につながります。
まとめ:Alibaba CloudのGeoDNS機能で中国向け配信も最適化できる
Route 53を使った地域別ルーティングは、Alibaba Cloud環境でも再現可能です。
- Intelligent DNSやGTMを活用すれば、地理情報に応じたルーティング制御ができる
- 中国本土ユーザーへの配信にも強く、ISPレベルの制御も可能
- 通信高速化と組み合わせることで、より実用的な構成に仕上がる
「Alibaba Cloudではできないのでは?」と不安に思われる方も多いですが、実はAlibaba Cloudのほうが中国市場に特化した設定がしやすいという面もあります。
中国向けWeb配信・DNS構成をクララがサポートします
- 他社DNSからAlibaba Cloud DNS/GTMへの移行支援
- GeoDNS設定やGTMポリシーの初期設定代行
- Express China・GAを使った日中間通信の最適化構成
- ICP登録要否を踏まえた合法的なWeb公開アドバイス