目前に迫る「例の崖」、わが社の脱レガシーは可能なのか:

サーバリプレース成功の鍵は「Nutanixのサブスク利用」 オンプレ環境をそのまま移行でクラウド化

本記事は2020年4月にITmedia エンタープライズ(https://www.itmedia.co.jp/enterprise/)へ掲載したコンテンツの転載です。

「自社システムはオンプレミスで運用し、5年ごとに見直す」というサーバ運用を改善したい企業は多い。しかしクラウド化したくても過去のIT資産を移行しきれないケースはないだろうか。オンプレミス環境をそのままクラウド化できたとしたら?

国内の公的システムをクラウド化する「クラウド・バイ・デフォルト原則」とともに、民間企業のクラウド化も加速している。次のリプレースでは思い切ったクラウド化をすべきか、それとも既存の資産を生かすためにオンプレミスを続けるべきか。いずれにもメリットとデメリットがあり、予算と時間は限られている。

そうした中、オンプレミスとクラウドの「良いとこ取り」ができる斬新なサービスが登場した。クラウド移行にありがちな懸念を解消するリプレースの選択肢とは。

レガシーサーバ運用の大きなリスク……そのリプレース計画、本当に大丈夫?

多くの日本企業にとって、デジタルトランスメーション(DX)実現の第一歩といえば「レガシーサーバからの脱却」だ。企業が自社にサーバを設置している限り、IT部門は資産管理や運用、定期的なリプレースといった保守の工数を減らせない。一見すると問題なく動いているサーバにも「経年劣化によるハードウェア障害」や「OSやミドルウェアの更新」などへの対応が必要で、対応期限を過ぎると部品調達や脆弱(ぜいじゃく)性管理が難しくなる。

クララの小松 恭兵氏

「これまでオンプレミスのサーバには『5年ごとにシステムを刷新する』という業界の慣例的なサイクルがありました。刷新のタイミングが決まっていたため、計画的な準備や社内稟議(りんぎ)などがしやすいというメリットがありました。しかし現在は、デメリットの方が大きくなっています」と、クララ ビジネスストラテジー部サービスデザインスペシャリストの小松恭兵氏は語る。

「テクノロジーの発達は加速を続けており、5年に1度の見直しでは最新のテクノロジーをキャッチアップできません。どんどん変化するビジネスの世界で5年後の事業規模を正確に見積もることは難しく、どうしてもリソースを買いすぎてしまう『過剰投資』になりがちです」

クララの小松 恭兵氏

つまり、5年ごとに見直す前提でレガシーサーバを運用していてはビジネスの変化に対応できず、IT投資の最適化もできないのだ。

「クラウドにすれば良い」が通用しない理由

レガシーなオンプレミスサーバを持ち続けるのがリスクになるなら、思い切って全面的にクラウド移行をすれば全て解決するのだろうか。日本では政府が「クラウド・バイ・デフォルト原則」を発表し、公共サービスのシステム刷新においてクラウドサービスを第一候補にすることを宣言している。

それに対し小松氏は「スタートアップベンチャーのように、もともとのIT資産が少ない企業であれば取れる手段です。しかし、多くの事業者にとっては難しいでしょう」と述べる。

オンプレミスサーバを利用していた企業にとって、クラウドは情報を自社の外に出すことを意味する。パブリッククラウドには「責任共有モデル」という考え方があり、ユーザーはオンプレミスの際にはなかったセキュリティ対応を追加で実施する必要がある。オンプレミスの環境を再現するためにプライベートクラウドを利用して、事業継続性のために冗長化に力を入れた結果「オンプレミスよりも高額になってしまった」という例も珍しくない。

小松氏が「一番の難点」と語るのが、既存システムの再構築だ。

「システムのOSが最新バージョンに更新されていないためにクラウドサービスの仕様に対応できなかったり、システムの中身がブラックボックス化していたりしたら、手がつけられません。ずっと物理サーバで残っていたシステムには、クラウドに移行できない理由があるのですから」

これまで実施してきたリプレースのような大きな投資をせずに、既存のシステムに手を入れず、そっくりそのままクラウドへ移行したい。しかもセキュリティは自社のポリシーに従い、運用コストも抑えたままで最新のサーバを利用したい。そのようなニーズに対し、小松氏は「クララなら、それが可能です」と自信を見せる。

Nutanixを月額サブスクリプション型の固定料金で利用、「Clara Cloud」のインパクト

クララの提供する“HCI as a Service”「Clara Cloud(クララクラウド)」は、前述の「そっくりそのまま」を実現する、オンプレミスとクラウドの“良いとこ取り”サービスだ。NutanixのHCI(ハイパーコンバージドインフラ)を月額サブスクリプション型で提供するもので、購入すると数百万円から数千万円のコストがかかる同製品が初期費用不要で利用できる。

同サービスのメリットとして小松氏が強調するのが「既存システムの改修が不要」という点だ。「改修によるサービスのデグレードでビジネスに悪影響が出たり、システムの仕様変更に伴うユーザー部門への研修を実施したりする必要がありません。IT部門もビジネス部門も負荷なくサーバのリプレースができます」(同氏)。

また小松氏は、5年に1度のリプレースで起こりがちだった過剰投資についても「Clara Cloudなら心配不要です」と自信を見せる。

「ディスクやノードの追加が迅速にできるため、ビジネスの勢いに即応するシステム展開が可能です。現状に必要なリソースで利用し、事業が成長したときに拡張すれば良いのです」(同氏)

現在、Clara Cloudの利用方法には「専用クラスタプラン」と「LGプラン」の2種類がある(2020年3月時点)。専用クラスタプランは最小3ノード構成で月額75万円~。小松氏によれば「20台前後のレガシーサーバを所有している環境であれば、こちらのプランがお勧め」だという。

一方、LGプランは専用クラスタプランよりも小規模な利用を見込むユーザーを対象とした共有サービスだ。月額2万5000円から利用可能で「まずはLGプランから始めてクラウド移行するサーバの適用を広げ、物足りなくなったら専用クラスタプランでNutanixの全てを活用していただける」(小松氏)ものだ。

2020年4月にはニュープランの提供を開始する予定だ。専用クラスタプランとLGプランの中間に当たるサービスで、ユーザーのよりシームレスなシステム成長を支援するという。

運用コスト72%削減、自社導入の経験が自信を支える

クララの宇野 素史氏

実はクララは、自社でClara Cloudを利用している。同社はレガシーサーバの増設を繰り返し、気付けば100ラック分の物理サーバを運用していた。

同社ソリューションビジネス部でチーフエンジニアを務める宇野素史氏は、当時を振り返って「ハードウェアの経年劣化に対応するための部品調達や保管、障害対応に苦しむようになっていました。しかし、サーバを利用するユーザー企業は現在の仕組みを変えることに前向きになれず、なかなか移行が進みませんでした」と語る。

同社はNutanixを利用し、システムの改修をしない「まるごと移行」に踏み切った。半年間で数百台のサーバを移行し切ったところラック本数が半減した。運用コストは72%削減し、さらに高効率で負荷の低いシステム運用体制が実現したという。

クララの宇野 素史氏

「移行コスト全てを当社で負担しても、それを補って余りあるメリットを出せました。この経験があるからこそ、お客さまにも自信をもって勧めることができます」(宇野氏)

現状のシステムをそのままクラウド移行するだけで、既存システムのパフォーマンスや信頼性を向上できた。この成功体験に基づき、クララはサーバ移行の支援や運用サービスを始めとしたソフトウェアも提供する。

宇野氏はユーザー事例として「例えば従業員1000人規模のある企業では、パブリッククラウドやホスティング環境に散在していたシステムをClara Cloudに統合し、一元的に管理できる体制を構築しました」と語る。

「レガシーサーバは、面倒を見るべきものが多くて運用が大変です。Nutanixはそれを大幅に簡素化しますが、それでも自社導入するとなると、製品の購入費用の他にラックの購入やネットワーク構築、設定工数、運用工数などが必要になります。Clara Cloudを利用すればそれらから解放され、お客さまはビジネスに専念できます」(同氏)

図1  Clara Cloudと従来のITインフラ(レガシーサーバ、NutanixのHCI、IaaS)の構成要素の比較

レガシーサーバとNutanix、Clara Cloud、一般的なIaaSの比較

小松氏は「クラウド移行することでパブリッククラウドとの接続性も高まり、システムの将来展望も描きやすくなります。今後は、そのようなマルチクラウド時代の到来に合わせて、接続状況の可視化やさらに高度なセキュリティ付加などをロードマップとして、サービスを磨き続けていきます」と今後の抱負を語る。

オンプレミスにはオンプレミスの、クラウドにはクラウドのメリットとデメリットがある。リプレースに当たって「どちらにするべきか」と迷うのであれば、オンプレミス環境のシステム改修をせずそのままクラウド移行できる“HCI as a Service ”である Clara Cloudは、有力な選択肢と言えるだろう

オンプレミス as a Serviceが2025年の崖を乗り越えるための鍵に

このまま何もせずにオンプレミスのレガシーなシステムのまま2025年を迎えるとどうなるだろうか。IT人材の不足も深刻化することが懸念される状況ではレガシーシステムのメンテナンスすら困難になる可能性がある。だからといって、レガシーシステムのリプレースを無計画で実施してしまうと「オンプレミスで拡張しにくい」「クラウドに移行してみたら、思ったよりコストがかかった」といった落とし穴にハマってしまうかもしれない。

それらの問題を回避するために、自社システムの棚卸しをして、モード1、モード2とシステムを使い分けることが必要だろう。そしてアプリケーションに応じて、オンプレミスシステムやパブリッククラウドなどの選択肢から適切なプラットフォームを見極めることが重要になる。

オンプレミスとクラウドの両方の利便性を持つオンプレミス as a Serviceは、コスト最適化の観点から企業にとって大きなメリットを持つ。パブリッククラウドにリフトできないシステムであってもオンプレミス as a Serviceのアプローチであれば、少なくとも初期投資を最小化しながらプライベートクラウド化を実現できる。オンプレミス as a Serviceは、身動きをとりにくいレガシーシステムの移行問題に一石を投じるソリューションといえるだろう。2025年の壁を乗り越えるための選択肢として、重要な鍵を握るかもしれない。