
Trusted Advisorの10チェックが2025年9月に廃止!コスト最適化の新設計方針とAWS運用への影響とは?
こんにちは!AWS Secureプロジェクトチームです!
今回は、Trusted Advisorのチェック項目が10件も廃止されるという、ちょっと見過ごせないアップデートについて取り上げます。
まず簡単におさらいしておきましょう。
この記事の目次
Trusted Advisorとは?
AWSが提供する運用支援サービスで、コスト最適化、セキュリティ、パフォーマンス、フォールトトレランス、サービス制限といったカテゴリにおいて、アカウントの状態をチェックし、改善提案を行ってくれるツールです。多くのAWSユーザーが、日常のクラウド運用を見直すための出発点として活用しています。
特に、Businessサポート以上のプランに加入しているユーザーは、Trusted Advisorの全機能にアクセスすることができます(BasicやDeveloperサポートでは一部機能のみ利用可能です)。
このため、すでにTrusted Advisorを日常的に活用している企業にとって、今回の変更は見逃せないものとなっています。
ちなみに、今回廃止される10件のチェックはいずれも「Businessサポート以上」で利用可能な項目に該当します。
BasicまたはDeveloperサポートのユーザーには影響がありませんが、Business以上のサポート契約を前提にTrusted Advisorを運用していた企業では、この変更を機にチェック体制や推奨運用の見直しが必要になる可能性があります。
また、今回の変更、「別にそんなに変わらないのでは?」と思われた方も多いかもしれません。しかし実はこれ、単なる仕様変更ではありません。
この変更には、AWSが目指す運用支援の方向性や、FinOpsの潮流、そして運用チームがこれから向き合うべき“新しい前提”が詰まっています。
クララでは、AWSネイティブな仕組みを活かした実践的な運用改善支援を行っており、今回のアップデートも大きな転換点だと捉えています。
この記事では、「廃止されるチェックの中身」だけでなく、「その背景にある思想」を交えて、読み解いていきます!
【2025年9月廃止】Trusted Advisorの10件のコスト最適化チェック一覧
2025年9月9日をもって、Trusted Advisorの以下の旧チェックが削除されます。
廃止されるチェック | チェックID |
EC2の低利用インスタンス | Qch7DwouX1 |
EBSの未使用ボリューム | DAvU99Dc4C |
EBSの過剰プロビジョニング | COr6dfpM03 |
RDSのアイドルDB | Ti39halfu8 |
Lambdaの過剰メモリ割り当て | COr6dfpM05 |
Savings Planの提案 | vZ2c2W1srf |
RDS RI最適化 | 1qazXsw23e |
Redshift RI最適化 | 1qw23er45t |
ElastiCache RI最適化 | h3L1otH3re |
OpenSearch RI最適化 | 7ujm6yhn5t |
これらは、いずれもコスト最適化に関連するチェックであり、Trusted Advisorが長年提供してきた“定番の推奨”でした。
たとえば、CPU使用率の低いEC2を検知して「削除してコスト削減できるかも」と提案したり、RDSの予約インスタンスの使い方を見て「もっと効率的に使えますよ」と教えてくれるものでした。
しかし、これらのチェックは基本的に静的ルール(閾値)ベースの判定であり、リソースの利用傾向や業務の特性を考慮した提案は含まれていませんでした。
AWSはこれらのチェックを廃止し、Cost Optimization Hub(COH)やCompute Optimizer(CO)を活用した動的なチェック群へ移行する方針です。
以下は、公式に後継と明示されているわけではないものの、参考として「代替的な観点で活用できる新チェック群」を紹介します:
参考となる新チェック例 | 対応サービス | 提供元 |
EC2コスト最適化推奨 | EC2 | Compute Optimizer |
EBSコスト最適化推奨 | EBS | COH |
RDSコスト最適化推奨 | RDS | COH/Compute Optimizer |
Lambdaコスト最適化推奨 | Lambda | COH/Compute Optimizer |
Savings Plan購入提案 | 各種Compute系 | COH |
RI購入提案(RDS/Redshiftなど) | 各種サービス | COH |
つまり、一対一での“置き換え”ではなく、「設計方針そのもののシフト」と捉えるのが正確です。
従来のような単純な「Idle=削除」ではなく、「業務に応じた最適化は何か?」を判断する仕組みへと進化しているのです。
クララでは、旧チェックを参考にして運用していたお客様が、この機会に新しい推奨設計へスムーズに移行できるよう支援しています。
Trusted Advisorの新チェックとは?Compute OptimizerとCOHによる動的推奨に移行
新しく提供されるチェックは、Cost Optimization Hub(COH)やCompute Optimizer(CO)をベースとした動的な推奨群です。
これらは、実際のリソース使用傾向や過去の実績をもとに、「今、削減すべき」「構成を見直すべき」といった文脈を含んだ提案をしてくれます。
とはいえ、これらのチェックを活用するには、オプトイン(明示的な有効化)が必要です。意外と知られていないこの要件、導入時には注意が必要ですね!
AWSの意図は?Trusted Advisorの廃止から読み解く運用設計の思想
この変更の背景には、次のようなAWSの意図が見て取れます:
- 静的な「ベストプラクティスの一覧」からの脱却
- 個別判断ではなく、利用状況・コストの“意味”を加味した提案
- 単なる通知ではなく、「どう動くか」まで導く運用支援
つまり、Trusted Advisorは“チェックリスト”から“ナビゲーター”へと、静かにそして確実に役割を進化させようとしているのです。
運用現場の課題に直面する今、何が足りない?クララの現場視点
とはいえ、現場の状況は理想どおりに進まないこともあります。
- オプトインを進めようにも、ガバナンス上すぐに切り替えられない(Compute Optimizerはリソース使用状況のメタデータをAWSサービスで収集・分析するため、一部の業種や企業では情報保護・監査要件との整合性が問われるケースがあります。たとえば、医療・金融業界やグローバル企業の一部では、リソース使用情報の外部転送や外部分析に制限を設けていることも)
- 新しい推奨が届いても、「誰が判断するのか」が曖昧で対応が進まない
- 通知が多すぎて、かえって“誰も見ない”状態に陥ることがある
クララでは、そうした“通知疲れ”や“属人化”の壁を越えるための、設計と運用支援こそが重要だと考えています。
【差別化の鍵】コスト可視化ツールではなくAWSネイティブで最適化を実現する
「コストを見える化したい」となると、CloudHealthやApptioなどの高機能なマルチクラウド対応のSaaSを検討される方も多いと思います。
ですが、私たちはこう考えます。
“高機能なダッシュボードを“導入”するより、AWSネイティブな仕組みを“設計して使いこなす”ほうが、確実で無駄がない。”
AWSが提供するCOHやCOは、正しく設計し、通知ルールやSuppressルールまで含めて活用すれば、十分なコスト最適化が実現可能です。
クララでは、このAWSネイティブな運用に合わせた初期設計・チューニング・通知整理の支援を提供しています。
【まとめ】今回のアップデートはAWS運用最適化の絶好のチャンス
今回のTrusted Advisorアップデートは、ただの機能変更ではありません。
“運用やコスト最適化を、根本から見直すタイミング”
──そう、まさに今がその好機だと、私たちは考えています!
「何を削るか」「誰が見るか」「どう通知するか」──
クララは、そうした日々のAWS運用を現場目線で支えるパートナーでありたいと考えています。