JSM Chatへの移行検討~Halpと過ごした1年半~

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クララ、コーポレートITエンジニア(情シス)の山崎です。

本エントリーは、Atlassian User Community Tokyoのアドベントカレンダー2022の21日目の記事となります。

ヘルプデスク業務におけるチケット管理に関して、Slack上で運用できるツール「Halp」と出会い、2021年夏に導入をしました。

Halpと連携する形で、メインのチケット管理にはJSM(Jira Service Management)を利用しています。

Halp導入後のこれまでの1年半の運用を振り返り、新たにJSM(Jira Service Management)に実装されたJSM Chatの機能のレビューを踏まえ、HalpからJSM Chatへの移行について、検討した結果をご紹介します。

Halpと過ごした1年半のふりかえり

紹介編

Halpは、Slackなどのメッセージサービスとの連携を前提に作られているチケット管理のサービスとなります。

さらに、Halpに内包されているチケット管理の仕組みだけでなく、Jiraなどの外部のチケット管理のサービスとも連携できる作りになっているのが特徴です。

弊社は、以前よりオンプレ版のJira Softwareを活用しておりましたが、2020年にオンプレ環境からクラウドへ移行し、その際にJSM(Jira Service Management)も導入、同時に、Halpも採用し、Slackと連携させる形でJSMの運用をスタートしました。

Slackをフロントに、Halpが仲介し、JSMを利用している弊社の運用環境は以下のようなイメージです。

Halpに関する日本語の情報はとても少ないですが、実際に運用されている方々が情報公開されていますので、こちらも参考になると思います。

導入編

2021年の春先にHalpの存在を知り、ちょうど、その頃はConfluenceとJiraをオンプレ環境からクラウドへ移行するところで、さらに、クラウド環境ではJSMの追加導入も予定していましたので、この流れに合わせてHalpも導入しました。

Halp単体の情報もそうですが、さらに発展的なJSMとの連携に関する情報ともなると、日本語の情報はほとんど見つからない状況でした。

以下の、公式の英語のドキュメントを読み解き、なんとか仕組みを理解して環境構築を行いました。

この時のTipsを内々に留めておくのはもったいないと思いまして、ACE(Atlassian Community Event) TokyoというAtlassian User Communityのイベントに登壇し、発表をしています。

発表内容は、ウェビナーの登壇動画がYouTubeで公開されていますので、そちらも参考になるかと思います。

投影スライドは以下より入手可能です。

運用編

導入効果

直近、約1年半(正確には、1年4か月)の運用で、Slack越し、Halp経由で作成されたチケットは、627チケットとなります。月に約40チケット、週に10チケット、1日2チケット程度の利用頻度でした。

従前の運用では、Slackやメールなど複数の問い合わせ経由から、手動でチケットを登録し管理していた時と比べると、運用工数は、1/10以下に減りました。

また、社内の利用者にとっては、コロナ禍を経て、リモートワークにより「コミュニケーションの中心」がメッセージ(Slack)に集約された現状においては、Slack経由で問い合わせが完結する現状は、ベストフィットな環境であり、新しい最先端な「ユーザー体験」としても定着をしました。

利用者への投票アンケート結果

良い機会なので、社内で投票型のアンケートを取ってみたところ、以下のような結果になりました。

投票項目 全投票数に対する割合
Slack完結で楽(になった) 64%
次世代な仕組み、今時な感じでイイ 18%
Slackフォームが面倒 11%
他の業務でも活用してみたい 7%
メール問合せに戻してほしい 0%

9割がポジティブな項目に対しての投票となり、1割ほど、プチ・ネガティブな項目「Slackフォームが面倒」への投票となりました。

ネガティブといっても、Slack上からの問い合わせの際に、必要な事項をフォーム入力してもらうという内容ですので、問い合わせをする以上、最小限の必要なステップだと考えています。

メールでの問い合わせに戻りたいという意見はゼロですし、他業務でも利用してみたいという前向きな意見もあったことは、大変よいことだと捉えています。

特に、「次世代な仕組み、今時な感じでイイ」という意見をもらえたことは、狙い通りだったとも言え、大変うれしい投票結果となりました。

管理面での課題

Halpは他のAtlassian社製品のサービスと異なり、日本法人経由での日本語のサポートを受けられません。

また、サポート関連の公式ドキュメントについても英語のみとなりますので、導入時の敷居が多少高く、運用時のトラブル発生時のサポートへの問い合わせも、少し面倒に感じる時があります。

JSM Chatの登場

JSM Chatとは?

今年、2022年に入り、JSMにSlackとの連携機能が新しく実装されたというニュースが飛び込んできました。

どうやら、Halpと同等の機能を、JSM専用に再実装された機能のようで、Halpなしで、Slack上でのやりとりをJSMのチケットに連携する仕組みとなっています。

JSM Chatについては、リリースされたばかりということもあると思いますが、公式の情報以外には、まだ日本語の情報は少なく、私の観測範囲ですと以下のみでした。

2つ目の情報は、今回のアドベントカレンダー19日目のエントリーとなりまして、JSM Chatを利用した実運用のお話が載っており、大変参考になりました。

日本語情報が充実!

一方、公式のドキュメントついては、Halpとは異なり、日本語の情報が充実しています!

製品の機能紹介も日本語で展開されていますし、サポート関連のドキュメントも日本語が揃っています。

そして、通常のJSMのサポートの範囲で問い合わせができますので、日本語のサポートも問題ありません。

そのほか、機能紹介の公式のウェビナーのアーカイブも見ることができまして、あわせて、関連しているスライドも公開されていました。

気になる機能

公開されている公式のドキュメントを一通り参照し、気になる機能をピックアップしてみました。

Slack上でチケットの承認が可能

Jira Service Management を Slack および Microsoft teams に接続する

Slack または Microsoft Teams で Assist から承認者に DM を送信し、Jira Service Management の課題に関する承認を簡素化します。承認者は Jira Service Management に移動しなくても、その会話から直接、リクエストを却下または承認できます。リクエストを承認または却下すると、その決定を記録したタイムスタンプ付きの通知がメッセージに表示されます。

どうやら、JSMのチケットの運用フローに承認工程がある場合、Slack経由で承認者への通知が行われ、承認者は、Slack上で承認のアクションが取れるようです。コレは期待していた部分でもあり、大変嬉しい機能です。

DMから作成したチケットに対して継続してSlack上でのやりとりが可能

Jira Service Management を Slack および Microsoft teams に接続する

DM から

DM にチケットの絵文字で対応する (Slack) か、チケット作成メッセージ アクションを使用します (Teams)。これで、リクエスト提出者はコメントを追加し、Assist ボット DM から状況を追跡できます。

SlackのDMで問い合わせを受けた場合、Halpでもチケット化はできましたが、チケット化したあと、コメントのやりとりをSlackのDM上で継続して行うことはできませんでしたが、JSM Chatの場合は、AssistというSlackボットを通じて、コメントのやり取りが継続できるようです。

JSM(ヘルプセンター/リクエストポータル)からの連携

JSM側のヘルプセンター/リクエストポータル上で作成されたチケットについても、JSMからSlackに対して同期するようになり、Slack上で展開が可能になりました。

従前は、Slack(Halp)からJSMのチケット作成後については、双方向同期が可能でしたが、あくまでも、Slack(Halp)側からチケットを作成した後、という前提でした。そのため、JSM側で作成されたチケットに関しては、Slack側で操作ができない状態でした。

また、Halp連携の場合(※)、JSM側のヘルプセンター/リクエストポータルから問い合わせがあっても、そのチケットの発動に気づきづらく、場合によっては見落とすこともありましたので、Slack or JSMどちらからチケットが起票されてもSlack上で確認ができるというのは大変ありがたい機能です。

※ 2022年11月にHalpのバージョンアップがあり、その後は、JSM Chatと同様に、JSM側のヘルプセンター/リクエストポータルから問い合わせがあった場合も、そのチケットに対して、Slack側で操作ができるようになっています。

絵文字スタンプで操作

Slack のチャット設定を管理する | Jira Service Management Cloud | アトラシアン サポート

絵文字ショートカットを使用すると、エージェントはリアクション機能で絵文字を追加することで、Slack メッセージでのすばやいアクションを実行できます。

Slack側で絵文字スタンプを利用して、チケットの項目に対して値を設定したり、ステータス(トランジション)の変更が可能ということで、このあたりをうまく活用すると、よりスピーディにチケット管理ができそうです。

ただし、以下のように注釈がありますので、JSMのプロジェクト作成時には注意が必要です。

絵文字ショートカットは、企業管理対象プロジェクトでのみ機能します

サービス プロジェクト サイドバーの左下に、”チーム管理対象プロジェクトをご利用中です” と表示されている場合は、絵文字ショートカットを使用できません。

JSM Chatにトライアル!

JSMのSandbox環境を利用して、新しくJSMプロジェクトを作成して、Slackと連携するJSM環境を構築して、動作確認をしてみました。

トライアルの詳細は、別エントリーとしましたので、詳細は以下を参照ください。

トライアルの感想としては、JSM Chatに置き換えたとしても、Halpの時と同様の操作ができましたので、JSM Chatへの移行については、全く問題ないと評価しています。

ただ、1つだけ、承認処理がSlack上で実施できるとありましたが、トライアルでは上手く機能しなかったため、こちらにつきましては原因調査等、別途確認をしたいと思います。

HalpとJSM Chatの比較

トライアル結果でも書いた通り、一般的なチケット管理の使い方であれば、HalpとJSM Chatでできることに差異はないと評価しています。

JSM Chatで十分?

機能面に関して、Halpを採用する理由を強いて挙げるとすれば、以下

JSM(Jira Service Management)だけではなく、Jira Softwareに関してもSlack上でのメッセージ連携を利用したい場合は、Halpを採用する必要があると思います。

JiraのChat機能は、現状、JSM(Jira Service Management)だけに提供されている機能となりますので、Jira Softwareでは使えません。

ただ、そもそもの利用シーンを考えた場合、Jira Softwareの課題管理において、Slack上でのテキストコミュニケーションと連携させる必要があるのか、具体的なユースケースが思い浮かばないため、弊社の現在の利用状況では必要がなさそうです。

JSM Chatで十分と言えそうです。

JSM Chatへの期待

Halpに実装されていて、JSM Chatでは実装されていない機能として、「Auto Answers」という自動応答の機能があります。

Auto Answersは、Slack上の投稿内容よりキーワードを抽出して、あらかじめ設定しておいたメッセージで自動返信させることができますが、残念ながら、日本語の対応が不十分で実運用では有効に機能させることが難しい状況です。

一方、JSMには、Confluenceと連携して機能するナレッジシェアという機能がありますので、これに類する形で、Slack上でも既存のナレッジを活用した自動応答の機能が実装されると良いのではないかと思います。

今後の展開

今回の、Halpの運用の振り返りと、JSM Chatのトライアル/動作検証により、Halpの代替として、JSM Chatが有効に機能することがわかりましたので、来年は、HalpからJSM Chatへの移行を進めていこうと考えています。

そして、Auto Answersのような先進的な機能が、JSM Chatにも実装され、さらに、新しい機能が続々とリリースされることをサンタに願いつつ…

Atlassian User Community Tokyoのアドベントカレンダー2022の21日目の記事を終えたいと思います。

Happy Hacking Chat Communications

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