中国本土から「Google Workspace」にアクセスできるのか?
中国現地で働く従業員にも「日本からアクセスするのと同じように各種クラウドサービスにアクセスさせ業務を行わせたい」というご相談を弊社宛によくいただきます。
その中でも、最近急増している希望アクセス先は『Google Workspace』です。
そこで本記事では「中国本土からGoogle Workspaceへアクセスする方法」にフォーカスを当て解説をしていきます。
先に結論からお伝えすると、「中国本土からGoogle Workspaceへはアクセス出来てしまいますが、中国政府の規制と照らし合わせるとアクセスしてはいけません」。
それはなぜなのか、解説していきましょう!
この記事の目次
背景
ご存知の通り、中国はインターネットに関する法律、規制・制限が数多く存在することから、世界各国の中でも特殊な環境にあります。
そんな中国からグローバルのサイトにアクセスする際には、様々な課題が存在します。
下記3点が、中国から業務上必要な各種SaaS、Webサイトが利用出来ない・アクセスしづらい主な要因です。
- 日中間の帯域不足
- 日中間の経路問題
- グレートファイアウォール(金盾)の検閲システム
そして、この3つの要因の中で「Google Workspace」が利用できない最大の要因は、グレートファイアウォールによる検閲といえます。
グレートファイアウォールの制限
グレートファイアウォールとは、中国国内のインターネット通信に対して接続規制や遮断を実施する大規模なネット検閲システムのことです。
中国の電信条例において、電気通信事業者に対し通信内容の確認を義務付けており、中国政府が閲覧を許可していないものはフィルターを通してブロックされます。
通常のインターネット網を利用した場合、回避策はありません。
端末(PCやスマホ)、場所(自宅やOffice)、回線種別(業務用回線や家庭用回線)を問わず中国サーバからインターネット網を利用してアクセスする場合、全ての通信がグレートファイアウォールの検閲対象となります。
フィルター対象で有名なサービスには、Twitter・Facebook・YoutubeなどのSNSや動画サービスがあげられます。
そして、この検閲対象の中にGoogle社が提供する多種多様なサービスも含まれています。
Q. それでは、以下のGoogleサービスのどれが検閲対象となり、フィルターに引っかかるのでしょうか?
- Google検索エンジン
- Gmail
- Google Map
- Google Workspace
- Google Cloud Platform
- Google Analytics
A. 上記の他、全てのGoogleサービスがグレートファイアウォール(金盾)の対象となり、インターネット網を通じては、中国本土からのアクセスは出来ません。
では、冒頭でお伝えした「中国本土からGoogle Workspaceへアクセス出来てしまう」とは、どのような方法を指すのでしょうか?
アクセス手段候補その①:AAS(SSL-VPN)で接続
まず1つ目はSSL-VPNです。
SSL-VPNとは、PCやスマホにVPNソフトウェアをインストールし、VPN網を利用するサービスのことです。
AASはSSL-VPNのソフトウェアを利用して、業務を行う上で必要なSaaSやクラウド、ウェブサイトをあらかじめ指定し、アクセスを高速化することができるサービスです。
SSL-VPNの使用方法は、専用ソフトウェアを使用端末にインストールしログインするだけなので、簡単に利用が可能です。
中国政府の規制対象ではないと判断できる指定のサービスやサイトのみを高速化・安定化するため、中国政府により急にアクセスを遮断されるリスクが少なく、業務用途として安心してご利用いただけます。
YoutubeやFacebookのように利用できないSNSやサイトもありますが、2021年頃まではGoogle Workspaceは接続可能なSaaSの1つに含まれていました。
(2022年7月現在)SSL-VPN経由でGoogle Workspaceアクセスが不可に!
2022年7月現在、AAS(SSL-VPN)を利用してGoogle Workspaceへアクセスが利用不可となっています。
中国では当初、ビジネスユースと判断できるGoogle Workspaceのアクセス・利用を一部制限していましたが、こちらも規制対象となってしまいました。
中国はこのように、定期的に制限の見直しを行っていることから、規制対象が日々変化するのが特徴です。
一方、AASを利用することにより以下のSaaSは高速利用が可能に
Google Workspaceとは対照的に高速アクセスが可能なSaaSサービス・サイトも存在しています。
(以下は一例です)
- Salesforce
- Box
- ジョブカン
- Teams、Zoom
- Drop Box
- AWS、Azure
- GitHub
- Slack
- Smartsheet
- rakumo
- backlog
などです。
弊社の提供するAAS(SSL-VPN)サービスを利用して、直接Google Workspaceへアクセスすることは出来なくなりましたが、次に説明するVPNと同じ方法の場合はGoogle Workspaceへアクセスが出来てしまうことがあります。
アクセス手段候補その②:VPNで接続
2つ目はVPNで接続する方法です。
中国から日本拠点へVPNを利用して接続します。
(※AAS以外のSSL-VPNもこれに該当します。)
VPNを利用して日本拠点や日本リージョンのデータセンタ・パブリッククラウドなどにアクセスをします。
そこから先は、中国からのアクセスであったとしても、日本で業務にあたる従業員が自社拠点を通過して通常のインターネットを利用するように、設定次第で
「Google Workspace」が使えてしまいます。
しかし「使えてしまう」という表現の通り、これは中国政府が認可する利用方法ではありません。
VPNは接続できるが遮断リスクが伴う
VPNを経由してGoogleに接続することは可能ですが、VPNの利用方法は中国政府が認めていない接続方法であることから、いつ規制対象となり遮断されてもおかしくありません。
VPNの遮断リスクとは
現在中国国内から利用できるVPNサービスは、様々な企業から展開されており、料金形態やスペックも多種多様です。
そして、中国政府の認可を受けていないVPNには既に規制が実施され、過去に大規模な遮断が話題になったこともありました。
1. 非適法VPN
事業者がVPNを提供するには、中国政府に届け出を行い認可されたことを証明するライセンスが必要です。
ライセンスを保有していない提供元のVPNは、遮断されるリスクがとても高いです。
実際に利用中に遮断されたというパターンも多く、弊社宛に「今まで使えていたVPNが突然利用できなくなり、業務に支障が出ている。どうにか対応方法がないか」とご相談を頂くこともあります。
また、MIIT(中華人民共和国工業情報化部)が正式に国境を跨ぐ通信を許可している中国3大キャリア、中国電信(CHINA TELECOM)、中国移動(China Mobile)、中国聯通(China Unicom)以外の回線を利用しているサービス等は非適法ですので、注意が必要です。
2. 適法VPN
正規の認定を受けている、国営の通信キャリアが提供している回線をバックボーンに持つVPNは、突然の遮断リスクは非常に少ないといえるでしょう。
しかし、前述の通り、中国政府の意図しない使い方は避けることが望ましいでしょう。
まとめ
以上のことから、VPNを利用して一度日本拠点にアクセスしてしまえば「Google Workspace」へのアクセスも可能となってしまいます。
しかし、それは中国政府の意図するところではないため、突然遮断されるリスクを伴います。
特に非適法のVPNや個人用のVPN等は、適法の国営キャリアが運営しているようなサービスと比較して、遮断のリスクは非常に高いと言えます。
VPNサービスは無料のものからビジネス用途のものまで様々に存在します。
そのため、サービス導入を決定する前に
- バックボーン回線
- 提供元のライセンス
- セキュリティ
- 通信速度/帯域
- 帯域保証状況
- 価格
- 遮断のリスク
などの項目をよく確認する必要があります。
適法のサービスであったとしても、中国政府が本来規制しているサービスを利用することは”出来てしまう”ことがありますが、規制上してはいけません。
ビジネスユースにおいては、コンプライアンス違反にもなりかねない非適法VPNや、セキュリティが不十分なVPNの利用は控えることを推奨いたします。
ビジネスユースでは、個人利用とは異なった損害を負うこともあるため、特に注意が必要です。
最後に
クララは、北京に子会社があり、中国現地でのITインフラ、ビジネスコンサルティングやリーガルアドバイザリーサービスを提供している「中国に強い会社」です。
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【クララが提供している中国通信サービス】
国営の通信事業者「中国電信」のグローバルネットワークバックボーンを利用することにより、通信遅延の影響を最小にした日中間の高速且つセキュアなVPN環境を実現しているサービスです。
China Connect SD-WAN / SSL-VPN
チャイナ・モバイル・インターナショナル社が保有する国際バックボーンを用いて提供する、日中拠点間や中国からのSaaSへのアクセスを最適化するネットワークサービスです。