“コスト高”で進まぬクラウド化、メリットだけを享受する方法とは?
新型コロナウイルスの影響で、対面的な活動の自粛を迫られITの重要性を再認識された方も多いだろう。情報システム部門にとどまらず、経営としてITの活用が加速され、ポストコロナではデジタルトランスフォーメーション(DX)に舵を切れない企業との差が明確になっていくことが予想される。企業のDXには、クラウドの積極活用が欠かせない。しかし、長年運用してきたオンプレミスの業務システムをクラウドに移行するにはかなりの手間やコストが掛かる。特に、クラウド移行に必要なリソースを自前で調達できない中堅・中小企業にとっては依然としてハードルが高い。“クラウド化へのコストが高い”という課題にはどのように対処すべきなのか。
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クラウド移行のメリットとコストの間で板挟みに……
現在多くの企業において、ITインフラの抜本的な見直しが喫緊の課題となっている。その背景には、「近年のビジネス環境の急速な変化やデジタル化の流れに適応できなければ、ビジネスを存続できなくなるのではないか?」という、多くの企業が抱える危機感がある。
経済産業省が公表した「DXレポート」でも指摘された通り、多くの日本企業は老朽化したレガシーシステムの維持・運用に多くの手間やコストを強いられており、デジタル戦略に十分なリソースを投入できずにいる。このまま古いITインフラを使い続けていては、いわゆる「2025年の崖」の問題にぶち当たり、デジタル変革が必要な時代を生き抜いていけないとの危機感を多くの企業が抱えている。
こうした課題を解決する上で極めて有効だとされているのが、クラウドサービスの活用だ。クラウドを使えば短期間のうちにITインフラを構築でき、ビジネスの成長に合わせて柔軟に拡張できる上、最新の技術にも迅速に対応できる。
そのため、ベンチャー企業やスタートアップ企業などは「クラウドネイティブ」を合言葉に、業務システムを当初からクラウドサービスでスピーディーに構築するスタイルが当たり前になりつつある。しかし、すべての企業がこうしたやり方を採用できるとは限らない。
オンプレミス環境で長年運用してきたシステムをなかなかクラウドに移行できない理由の最たるものが、「オンプレミスとクラウドの環境の違い」だ。たとえばクラウドサービスの代表選手であるAWSでは、32ビットアプリケーションは基本的にサポートされていない。導入しようとして初めてIaaS側に制限事項があることに気づく企業が多いのだ。
また、すでにベンダーのサポートが終了した古いOSなども多くの場合は対応していない。そのため、それまでオンプレミスの古い環境で使い続けてきた32ビットアプリケーションや、古いOS環境を塩漬けにして延命させてきた古いアプリケーションをクラウドに移行するには、アプリケーションに大幅に手を加える必要がある。
当然のことながら、これを行うにはかなりの時間とコストが掛かる。大きな収益が見込めるアプリケーションであれば投資を行う価値があるが、社内の業務システムの場合、コストを掛けるのは難しい。“クラウド化へのコストが払えない”という課題をどのように乗り越えるべきなのだろうか。
HCIのサービス化でクラウド移行のハードルを大幅に下げた「Clara Cloud」
こうした“クラウド化へのコストが払えない”という課題に直面している企業に対し、クララが提供しているのが「Clara Cloud」だ。
Clara Cloudは、月額の利用料金を支払いながら、ネットワーク経由でサーバの機能を利用できるというもので、オンプレミスからクラウドへの移行コストを最小限に抑えつつ、クラウド導入のメリットを最大限に享受できるサービスである
サーバのスペックを柔軟に指定できたり、システム規模を柔軟にスケールできたりと、一見すると一般的なパブリッククラウドのIaaSサービスと何ら変わりないようにも見える。
しかしClara Cloudは一般的なIaaSサービスとは異なり、ユーザーがインフラ環境をオンプレミスの場合と同じく、「事細かな制御」ができるようになっている
たとえば利用するOSなども、オンプレミス環境と同様にユーザーが自由に設定できる。オンプレミス環境とまったく同じ環境をクラウド環境上に構築できるため、たとえ古いプラットフォームにしか対応していないアプリケーションでも、そのまま問題なくクラウドへ移行できる。
移行後は通常のクラウドサービスと同じく、ユーザーはハードウェアの運用を担う必要はなく、サブスクリプションモデルとして月額利用料金を支払い続けながらシステムを使い続ける。言ってみれば、オンプレミスとクラウドの「いいとこ取り」をしたようなサービスだ。
ただしこの製品の導入メリットを得るには、アプライアンス製品を購入して自社環境に導入・運用する必要があり、ある程度のITスキルが必要となる。そのため、自社に高度なスキルを持つIT要員を確保できない中堅・中小企業にとっては、導入のハードルが高かったのも事実だ。
そこでクララは、同社のデータセンターにNutanixを大量に導入し、その機能をクラウドサービスとしてユーザーに提供することにした。いわば、「HCI as a Service」とでも呼べるサービスだと言えよう。これによって、Nutanixのメリットをより幅広い企業に享受してもらえるようになったという。
サービスを提供するクララ ビジネスストラテジー部 サービスデザインスペシャリスト 小松 恭兵氏は以下のように説明する。
「長年事業を営んできた企業の多くは、オンプレミス環境で多くの業務システムを構築・運用しており、システムをクラウドに移行するのにかなりの手間とコストが掛かることが多いのです。こうした、クラウドのメリットを享受したいが、技術面やコストの面で採用が難しいという企業のためにこのサービスが生まれました」(小松氏)
すでに多くの中堅・中小企業がClara Cloudで効率的なクラウド移行を実現
Clara Cloudの導入メリットの1つに、その処理パフォーマンスの高さがある。代表的なパブリッククラウドのデータベースサービスの処理性能は数万IOPS程度だが、Nutanixは数十万IOPSと桁違いの処理性能を発揮する。そのため、処理負荷が高い業務システムの移行先として、パブリッククラウドの代わりにClara Cloudを選ぶ企業が多いという。
たとえば、Clara Cloudは電子カルテシステムを稼働させるITインフラとして採用されている。医療データは多くの個人情報を含むため、定められたレギュレーションに沿う必要があり、パブリッククラウドの利用は現時点で明確な基準がない。しかしこれからのデジタル時代にふさわしいITインフラを実現するには、やはりクラウドのメリットは積極的に取り入れていく必要がある。
その点Clara Cloudは、プライベートクラウドに近い形でユーザーがITインフラを事細かに制御できるため、高いレベルのセキュリティを担保でき、医療業界向けシステムとは極めて親和性が高い。また電子カルテやレントゲンの画像データなどは極めて容量が大きいため、パブリッククラウドを利用するとかなりコストが掛かる。この点においても、Clara Cloudは容量当たりのコストパフォーマンスに優れているため、電子カルテシステムの用途にはぴったりだという。
また別の企業では、リモートワーク用にVDI(仮想デスクトップ)のIT基盤としてClara Cloudを採用している。この企業では当初、クラウド上でVDI環境の一部を先行してクラウド上で構築したものの、断続的なフリーズが発生し、VDI全社導入計画が頓挫(とんざ)しかかっていた。
ブラックボックス化している環境がゆえに、原因の特定すらするのが困難であったこと、原因究明中にパブリッククラウド側の仕様変更により、VDIのバージョンアップを迫られたことで、計画が白紙となった。
しかしClara Cloudでは、先行導入時と同じOSで試験ができ、パフォーマンスのボトルネックが解消したことで、無事VDI環境の全社展開にこぎ着けられ、採用に至ったという。
こうした実績を踏まえ、クララでは今後Clara Cloudの提供を通じて、これまで技術的な問題や予算・人員の制約からクラウド移行やVDI導入に踏み出せなかった中堅・中小企業に対してクラウドの価値を提供していきたいとしている。
「潤沢なIT予算を持ち、自社内に多くのIT要員を抱える企業であれば、さまざまなコストの掛かるクラウド移行もきっと自分たちだけでやり切れることでしょう。しかし多くの中堅中小企業は、クラウドの波に乗り遅れることのリスクは重々承知しつつも、予算や人員、スキルの制約からなかなかクラウド移行に踏み切れずにいます。そうした企業にこそ、ぜひClara Cloudを通じてクラウドのメリットを効率的に手に入れて、これからのデジタル時代にふさわしいITインフラを手に入れていただければと思っています」(小松氏)