
中国通信規制に対応したMicrosoft 365・Google Workspaceへ接続するための環境構築~適法なVPN・SD-WANで低遅延・高品質通信を実現~
2025年1月30日に「中国通信規制に対応したMicrosoft 365・Google Workspaceへ接続するための環境構築~適法なVPN・SD-WANで低遅延・高品質通信を実現~」というセミナーを開催しました!
近年、多くの日本企業が中国市場へ進出し、現地スタッフやパートナーとの業務連携がますます重要になっています。
それに伴い、Microsoft 365やGoogle Workspaceをはじめとするクラウドサービスを日中間で連携したいというご要望も多くいただきます。
今回のセミナーでは、中国通信規制に対応したMicrosoft 365やGoogle Workspaceへ接続するための環境構築をテーマに適法な構成例やソリューションの選び方について解説しました。
本記事では、セミナーの内容を振り返りながら、中国拠点でグループウェアなどを利用する際のポイントをご紹介します。
この記事の目次
セミナー概要
- 中国のネットワーク事情
- 中国からSaaSを接続する際の最適な構成とは
- Microsoft 365・Google Workspaceを利用する際の考慮事項
中国の通信事情
中国には、CNNIC(中国インターネットネットワーク情報センター)という中国のインターネット関連の管理機関があります。当局から毎年、ドメイン数、IPアドレス数、インターネット人口などの統計が発表されており、この数値から中国の通信事情が見えてきます。
最新の統計によると、中国のインターネット人口は 10億6,000万人 ですが、中国国外への帯域幅は 約14,700Gbps に限られています。この人口を帯域幅で割ると、1人当たり17.3Kbps しか利用できません。
つまり、中国から国外のWebサイトにアクセスする際、通信が非常に困難な状況になっていることがわかります。こうした人口当たりの帯域不足が通信遅延に繋がり、日系企業が直面する課題の一因となっています。
通信障害が起こる3つの理由
中国拠点から Microsoft 365や日本のサーバーにアクセスできない、または遅い というご相談をよくいただきます。皆さん、グレートファイアウォールが影響していると思われていますが、半分正解です。
グレートファイアウォールももちろん通信に影響しているのですが、その他にも前章で出てきた帯域不足の問題や通信経路なども通信に支障をきたす原因となる場合があります。
通信障害の原因
- グレートファイアウォール(GFW)による制限
- 特定のIPアドレスやWebサイトへのアクセスがブロックされる。
- VPNを使えば回避できる場合もあるが、VPN自体が規制される可能性がある。
- 通信帯域の不足
- 中国国外への通信帯域が限られているため、特にピーク時には通信速度が低下する。
- 通信経路の問題
- 中国と日本の通信が直接接続されていない場合、他国の業者を経由することになり、通信経路が遠回りになる。その結果、通信遅延が発生する。
こうした中国ならではの通信状況を正しく理解し、それぞれの原因に応じた対策を講じることが重要です。
中国での環境構築にはかかせない法的リスク
中国には、通信の安全・安定化のため、中国電信条例や中国サイバーセキュリティ法があり、違反した場合は罰則や罰金が科せられます。
法的なリスクを理解することは重要なのですが、正しく理解することは極めて困難です。
そのため、専門機関でアセスメントを行い、サポートしてもらうことがリスク回避の一番の近道になります。
これらを踏まえた上で、導入検討時に意識すべき法的リスクを見ていきましょう。
法的リスクを考慮する上で重要なのが、サービスを提供する側・利用する側の立場で意識するポイントが異なるということです。
特に、中国に進出する企業様はサービス提供者が適切なライセンスを保持しているかを確認し、違法な通信方法を選ばないようにしましょう。
また、国の安全を脅かすような機密情報などを送信するとサイバーセキュリティ法の罰則対象となります。中国から日本に不適切なデータを送信しないよう気を付けることも重要です。
中国拠点からSaaSへ接続する際の最適な構成
日本と中国間で通信を行う目的は、拠点間の接続、ウェブサイトへのアクセス、SaaSサービスの利用など多岐にわたります。
その中でも、今回は接続先がSaaSの場合の構成について詳しく見ていきたいと思います。
中国拠点からSaaSにアクセスする場合、次の点を確認する必要があります。
中国拠点からのアクセスに関する重要なポイント
- 中国3大キャリアを利用し、帯域を確保して直通ネットワークを構築
- 不適切な通信を防止する
- ライセンスを保持したサービスを利用する
上記の3点をクリアすれば、技術的には日中間の帯域を確保し、直通ネットワークを整備することができます。また、リーガル面では適切なライセンスを持ったサービスを利用し、不適切な通信を避けることが求められます。
適法ネットワークとVPNの違い
実際に導入を検討する際に、日中間通信ソリューションを調べると数多くの種類がありどれを選んだら良いか迷うかもしれません。
適法ネットワークとVPNの違いを理解しておくと選定時の役に立つかもしれません。
専用線 はキャリアによる回線帯域の保障があり、高品質ですが工事が必要で費用が高くなります。
一方、一般的なVPN はコストがかからないものの、適切なライセンスを取得していないサービスが多いため、後から利用できなくなるリスクがあります。
適法ネットワークの通信 は、国営キャリアの通信を使用するため、遅延やパケットロスの影響を受けにくく、低価格で導入できます。現在、これらのサービスは低価格で提供されており、専用線よりもコストを大幅に抑えることができます。
違法VPNのリスクを避けるためにも、適切なVPNソリューションやネットワークソリューションを活用することが重要です。
ソリューションの選び方
これまで、国営キャリアのバックボーンを使用する必要があることについて説明してきました。
しかし、実際の接続手段としては、専用線、VPN、SD-WAN、クラウド間接続など、さまざまな選択肢があります。
この章では、ケースごとに最適なソリューションを、弊社の製品とともにご紹介します。
CASE①:中国拠点で利用しているルーターをそのまま使いたい
✅既存ルータ―を活用できるChina Connect CN2プランがオススメ!
中国拠点で使用しているルーターをそのまま継続利用できる場合や、使用可能なルーターを所持しており、新たに購入する必要がない場合があると思います。
その場合、既存ルーターを活用できるタイプのソリューションがおすすめです。
また、ルーターの設定変更を自社で行う企業様もこちらに該当します。
CASE②:中国拠点に技術者がおらず、自社でルーターの設定・設置を実施することが技術的に難しい
✅ゼロタッチプロビジョニングを提供するChina Connect SD-WANプランがオススメ!
こちらは自社でルーターを設置するのが難しい場合や、今使用しているルーターを中国国外向けのルーティングに使いたくない場合に最適なプランです。
設定済みルーターを受け取り、電源と既存ルーターに接続するだけで利用できるソリューションがおすすめです。
弊社の「China Connect SD-WANプラン」では、ONUにルーターを接続して、エンジニアがリモートで設定を行うゼロタッチプロビジョニングをご利用いただけるので、現地に技術者がいなくても安心して導入いただけます。
CASE③:中国国内向けインターネットと国外に出るインターネットの混在による遅延が発生している
✅ルートの振り分けができるChina Connect CN2プラン、China Connect SD-WANプランがオススメ!
回線経路による遅延のため、中国国内向けインターネットと国外に出るインターネットを分けたいという要望もございます。
例えば、中国拠点から中国国内外に多くアクセスする方がインターネットを分けていないと、中国国内のサイトに直接アクセスしたいのに、海外経由で遠回りしてしまうことがあります。
そのため、日本やその他国外に行く通信は国外ルートを通し、中国国内へのアクセスは通常のインターネットを通すように使い分けができると遅延を防げます。
全てのソリューションが振り分け設定できる訳ではないので、適切なソリューションを選びましょう。
ご紹介した製品は以下のページにまとめられておりますので、ぜひご覧ください。
https://ci.clara.jp/cloudchina/chinaconnect/#planList
今回ご紹介したもの以外にも様々なケースがあります。
課題をお持ちの場合やより詳しいご説明をご希望の場合は弊社までお問い合わせください。
中国でのMicrosoft 365やGoogle Workspaceの利用に関する考慮事項
中国でMicrosoft 365やGoogle Workspaceを利用する際に考慮するべきことは「法的リスク」と「通信の安定性」だと考えています。
考慮事項①:法的リスク
1つ目の法的リスクとは、データの持ち出しや保持に関して注意を払わなければなりません。
中国では重要データや個人情報に関して国内にデータを保存する義務があります。
従業員情報は重要データに該当しませんが、顧客情報やセンシティブな内容(身体的特徴や宗教など)は、重要データに該当する可能性があります。また、10万人以上の個人情報を扱う場合は、中国国内にデータを保存し、安全評価を実施する必要があり、注意が必要です。
考慮事項②:通信の安定性
2つ目は通信の安定性です。
いざ、業務でMicrosoft365などを利用しても、通信遅延が続けば仕事になりません。
遅延やパケットロスの問題は、適切なネットワークソリューションを使用することで解消可能です。これにより、リスクを最小限に抑え、セキュリティも確保できます。
また、現地で提供されている中国版Microsoft 365の利用を検討されている方もいらっしゃいます。
中国版Microsoft 365は、国際版とほぼ同等の機能を提供しており、データ保存の設計や機能に違いはほとんどありません。ただし、国際版と連携して使用したい場合は、別のライセンスが必要となり、マルチテナント機能に制限があることに留意する必要があります。
まとめ
前提として、中国からの通信が遅い理由はグレートファイアウォールの影響だけではなく、自社ネットワーク環境の問題の可能性もあることをまず把握しましょう。そして、対策法と考慮すべきネットワークサービスリスク について理解することも重要です。
また、日中間通信ソリューションを導入する際はネットワークサービス提供ライセンスを持った事業者を必ず検討しましょう。専用線が必ずしも最適ではない 場合もあるため、コスパの良い選択をしましょう。
さらに、中国のネットワーク環境には、法規制や情勢 など、専門的な知識が必要になりますので、専門家に相談することをお勧めします。
クララ株式会社では、日中間通信を含む中国ITソリューションのご支援を行っております。
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