Alibaba Cloud DNS を利用して中国からのWEBアクセスを早くしよう-その1
こんにちは。クララの吉村です。今回は Alibaba Cloud DNS についてご紹介します。
第1回目になるので、概要からご説明します。
第2回目の記事はこちら
中国国内のDNS
WEBサイト運営者として、名前解決の速度を気にしたことはありますか?
日本語のWEBサイトを作っているときにはあまり気にしないと思いますが、中国向けWEBサイトを作ったときには意外と気になる部分です。
なぜなら、名前解決の速度が遅いことによってWEBサイト全体の表示速度が遅くなるなど、ただでさえ遅い日中間通信がさらに遅くなるからです。
DNSはインターネットの基礎となる部分ですので、ここは良くしておきたいですよね。
では、どうすればいいのか?
それは中国国内のDNSを利用すれば解決します。
中国からWEBサイトのアクセスを早くするには、いろいろな課題をクリアしなければなりません。
例えば、GreatFirewallに引っかかるようなコンテンツは含まないだとか、Baidu検索に引っかかるように検索エンジン対策をするだとか。
そのうちの一つとして、中国国内DNSを利用するだけで中国からのアクセスが早くなるかもしれません。
是非試してみてください。
Alibaba Cloud DNS
現在、一番簡単に中国国内DNSを利用する方法はこれでしょう。
サービスリリース情報 | |
サービス詳細ページ | Alibaba Cloud DNS |
利用方法の詳細ドキュメント |
Alibaba Cloud DNS (ドキュメントセンター) |
SBクラウド社が提供しているAlibabaCloudを利用することで、日本からでもすぐに中国国内DNSが利用できます。
Alibaba Cloud DNSは、中国大陸向けに特化した機能が豊富で、しかも価格が安いです。
私も最初に触ったときに、その機能の多さに戸惑いましたが、勉強していくと実に興味深い機能です。
例えば以下の画面をご覧ください。
一般的なDNS設定には見かけない項目があります。
ISP 回線 (中国国内)
中国国内におけるインターネットアクセスの高速化を目的として、Alibaba Cloud DNS では、アクセスソースに応じて異なるアクセスプロバイダー回線を設定できます。回線オプションを以下に示します (デフォルト回線を設定する必要があります)。中国市場をターゲットにする場合は、実際のニーズに基づいてこの回線を設定できます。
これは各DNSレコードにアクセスプロバイダーを設定する項目です。
日本ではそんなことする必要ないので不思議に思うかもしれないですが、中国国内ではISPのAS接続性が不安定であったり、ISP系列のデータセンターには別のISPからアクセスが遅かったりと、ISP依存による問題が起こります。日本で例えるならば、家のネットでニフティ使っているとなんかYahoo!にアクセスが遅い、みたいな感覚でしょうか。
このISP回線を設定することで、
- China Telecom (中国電信)
- China Unicom (中国聯通)
- China Mobile (中国移動)
上記のような中国の主要ISPのどれを使っているか、モバイル環境向けサイトなどの目的がある、などをDNSレベルで解消しましょうという設定のようです。
さらに、
検索エンジンクローラー
Web クローラーにより、Web サイトのアクセスパフォーマンスがある程度の影響を受ける可能性があります。Alibaba Cloud DNS では、検索エンジン用に個別のアドレスを返すことができます。これにより、クローラーが Web サイトのインデックスを作成する速度の向上が期待できます。
Baidu対策の設定があります。
中国では検索エンジン=Baiduですので、Googleロボットではなく、Baidu Spider を優先して対応しなければなりません。
他にも面白い機能がたくさんありますが、別途ご紹介します。
AWS の Route53 の中国版をイメージしてもらえれば大丈夫です。
注) AWS中国リージョンにはRoute53がありません。
無料版と有償版
AlibabaCloudDNSは、無料版のベーシックDNSと有償版のエンタープライズDNSがあります。
無料版だと応答するネームサーバのロケーションが中国本国だけですが、有償版では「米国東部、米国西部、香港、オーストラリア、ドイツ、シンガポール」なども加わるので、多言語サイトの場合には特に良いと思います。
そもそも無料でも使えるのか!と太っ腹だなと思いますが、価格が安いのでどうせなら有償版を使っちゃいましょう。
注意点としては、Alibaba Cloud DNS の価格体系はとても複雑で、以下のように設定項目ごとに月額or年額の費用が変わります。
(まぁ安いので気にせず買っちゃうレベルですが)
面白い点としては、無料版と有料版のネームサーバ名の違いです。
ネームサーバ名 | |
無料版のネームサーバ | ns7.alidns.com ns8.alidns.com |
有料版のネームサーバ | vip1.alidns.com vip2.alidns.com |
これは中国あるあるで、高めのITサービスにはVIPという文字を入れて露骨なネーミングになったりします。
また、有料版にある「保護QPS」という項目も注目すべきでしょう。
この項目は、あくまでセキュリティ対策としてのDDoS保護の耐久レベルを設定しています。
DNS負荷を計測するQPSという単位もなかなか普段は見ないですが、最大値の500,000 QPS でも月額 936円。安いですね。
Route53 のようにクエリ毎に従量課金で費用が上がるのではなく、Alibaba Cloud DNS の計算方法は月額課金ですのでお間違いなく。
実際の速度
それでは、実際のDNSのクエリの応答速度を見ていきましょう。
今回は、北京のサーバからのDNSクエリ速度を、日本国内の某有名ネームサーバとAlibaba Cloud DNS のエンタープライズ版とで比較したいと思います。
といっても、平日の適当な時間に dig コマンドの結果を1回計測しただけですので、あしからず。
日本国内の某有名ネームサーバ | Alibaba Cloud DNS エンタープライズ版 (デフォルト設定) |
;; Query time: 76 msec ;; Query time: 77 msec ;; Query time: 74 msec ;; Query time: 76 msec ;; Query time: 75 msec ;; Query time: 90 msec ;; Query time: 112 msec ;; Query time: 78 msec ;; Query time: 76 msec ;; Query time: 76 msec ;; Query time: 73 msec ;; Query time: 75 msec ;; Query time: 79 msec ;; Query time: 78 msec ;; Query time: 79 msec ;; Query time: 356 msec ;; Query time: 78 msec |
;; Query time: 40 msec ;; Query time: 74 msec ;; Query time: 251 msec ;; Query time: 6 msec ;; Query time: 29 msec ;; Query time: 298 msec ;; Query time: 34 msec ;; Query time: 181 msec ;; Query time: 320 msec ;; Query time: 40 msec ;; Query time: 73 msec ;; Query time: 244 msec ;; Query time: 7 msec ;; Query time: 25 msec ;; Query time: 273 msec ;; Query time: 34 msec ;; Query time: 198 msec |
日本国内の有名ネームサーバが安定して80ms弱で、Alibaba Cloud DNS は最速6ms ~ 最遅320msまでバラツキがあります。
Alibaba Cloud DNS は最初からは期待通りの結果はでませんでしたが、1桁台の速度には可能性を感じざるを得ません。
これはデフォルト設定なのが関係している気がしているので、もっと中国国内からの速度を上げるために、次回は Alibaba Cloud DNS のチューニングをしていきたいと思います。
では、今回は概要だけの紹介でした。次回もお楽しみに!